ぴろりんのひとりごと

ひとりごとですが、誰かに伝わって欲しくてつづります。いつまで続くかは神のみぞ知る。

出産レポート③

前回の続きです。

 

<入院3日目>

 

今日は旦那が休みの日なのでいつ何が起こっても大丈夫。昨日ぐっすり寝られたおかげで、気分がスッキリしている。

 

6:30 お隣のご主人が電話で呼ばれてる。お隣さんは昨夜のうちに破水して、夜の間ずっと自分の陣痛が来ていたらしい。破水をしているので、今日は点滴の誘発からスタートするみたい。

 

7:00 NSTモニター装着、内診。子宮口2センチ。少し前進した。今日も錠剤を2錠まで飲んで、その時点で錠剤の継続か点滴かを決めるとのこと。1錠目を飲む。

 

7:45 朝食、完食。食欲はある。

 

8:10 お隣さん、かなり辛そうに「痛い~、痛い~」と言っている。ご主人がずっと腰をさすっているようだが、ここで耳を疑うことが。お隣さんの陣痛の波が来ている時は、一生懸命さする音が聞こえるのだが、波が去った時に聞こえるのはかすかなイビキ。波の合間に奥さんが寝ているのかと思ったが、どうやら寝ているのはご主人の模様。お隣のご主人と言えば、入院1日目の昨日、張り切って仕事の休みをとったものの、日中は付き添いの必要ないと家に帰されたはずだが、まさか遊び疲れて今眠いとかじゃないだろうな?そうだとしたら、使えなさすぎる。

 

8:30 トイレに立った帰りに、バランスボールを発見。今日は睡眠が足りているので、赤ちゃんが降りて来るように少し運動をした方が良いかもしれない。しかし、今陣痛室には自分を含めて3人の妊婦がいるようだが、自分の部屋に持っていって良いのだろうか?ちょうど通りかかった助産師さんに聞いてみると、ドウゾドウゾと言われたので、部屋に運んでその上でバウンドするような形で過ごすことにした。

リクライニングベッドを高めにし、掛け布団を折り畳んでタオルをあて、痛みがきたらその上に突っ伏すようにしてやり過ごす。この時は弱めの陣痛が5~10分間隔で来ていた。錠剤の効き目か、それとも自分の陣痛なのかわからない。

バランスボールに乗っていると、少し動くだけで背中や股関節のストレッチがしやすい。陣痛の波の合間には、バウンドしたり体を伸ばしたりひねったりして、体が固まらないようにしていた。

 

10:00 旦那が到着。

 

10:30 内診。子宮口1センチ。バルーンを挿入しようとしたところ、「あれ?かなり柔らかくなってるね!これはバルーン必要ないか?でも、やっぱり入れてみよう。…バルーン、出てきちゃうね、バルーンの必要ないです。」ということで、子宮口は1センチに戻ったものの、固さがかなり柔らかくなったとかで、バルーンは回避、点滴をスタートすることに。子宮口がこれだけ柔らかくなったのは、昨日と一昨日の2日間があったからなんだよ、と言われる。

 

10:50 点滴をレベル10からスタート。今日も30分間隔でレベルを上げていく。

 

11:20 点滴レベル20。まだ余裕あり。

 

11:30 昼食。痛みの合間に食べたい物だけ口に入れる。半分くらい食べて残りは旦那にあげる。食べ終わったお膳は早々にさげてもらうようお願いする。お隣は、「少しくらい食べなきゃ…」「食べたくないって言ってるじゃん!」のやり取りの繰り返し。私は今は余計な会話を一切したくない。ただこの痛みと向き合うことだけに集中させてほしい。その他の要素は一切排除したい。

 

11:50 点滴レベル30。昨日と同じように、痛みが来てる時に「フーッ、フーッ」と声を出しながら呼吸に集中して痛みを逃す。

 

12:20 点滴レベル40。バランスボールに座っているのが辛くなってきた。床に膝をついてバランスボールに突っ伏してみる。トイレに行くなら早めに行かなきゃ…と、頑張ってトイレに行く。トイレでも波は襲ってきて、立ったままやり過ごす。お隣さんが分娩室に移動。ああ、やはり先を越された。

 

12:50 トイレから戻り、立ってるのがまだ楽かも?と、立ったまま痛みに耐えていると、NSTのモニターがずれたと助産師さんが直しに来る。ついでに無言で点滴レベル50に引き上げる。引き上げる時は告知してからにしてくれ~。

 

13:30 相当痛いが、誰も様子を見に来てくれないので旦那にナースコールを頼む。私のお産は進んでいるのか、状況が知りたい、診察して欲しいと頼む。お隣さんの分娩に人手が割かれているのかもしれないが、助産師さんが来てくれて、では一度見てみましょうということになり、ベッドに仰向けになる。子宮口5~6センチ!進んでる!

もう少しだね~と言われ、いきみたくなったら呼んでねと言い残して助産師さん退室。そのままの体勢でしばらく頑張る。痛みは、もう呼吸だけでは逃しきれないようになっていて、痛みの波がきたら「あーーー」とか「うーーー」という声を出さずにはいられない。何かを握りしめたくて、右手は旦那の手を力一杯握りしめ、左手は掴む物がないのでグーにして握りつぶす。痛みの波の合間は眠りそうなくらいの虚脱感。

 

14:30 いきみたい感じがよくわからないが、はき気がある時などに自分の意思とは無関係にオエーっとする感覚?お腹を下してトイレに駆け込んで、止められない下痢みたいな感覚?それと似た感覚で、意思と無関係に止められない排便欲求みたいなものが出てきた。これか!?早速ナースコール!いきみたくなってきたと報告。

 

14:40 内診。子宮口9センチ!かなり進んでる!でも、まだ分娩室には行けないのだろうか。いきみたくなったらいきんで良いのだろうか?「あの、分娩室にはまだ行けないんですか?」と尋ねる。「まだ、もう少しですね」と答え、助産師さんが去っていく。

 

それから数回、波が来る度に、逃し方がわからず勝手にいきんでしまっていた(←いいのか?)ら、再び助産師さん登場、分娩室に行きましょう!ということになった。

 

旦那は分娩室への持ち物をてきぱきと指示され、荷物をまとめて(貴重品とカメラ、飲み物と言われてた模様)、親に分娩室に入る旨のメールをしていたらしい。私は壁に手を着きながら、一人でヨロヨロ歩いて分娩室へ。

 

15:00 分娩室では慌ただしく分娩の準備が行われていた。隣の分娩室では、お隣さんの分娩も平行して継続中。二人同時の分娩…人手の薄い、夜間休日じゃなくて本当に良かった…。

 

ベテラン助産師さんが、「今、私となりと掛け持ちで診てますので。」と説明。具体的にどうやって掛け持ちが可能なのかはさっぱりわからないが、その後の私のいきみの時にはずっといてくれたのを覚えている。

 

セッティングが完了すると、「あら、Sさん、○○(忘れた)だね。こりゃSさんの方が早そうだね。1時間以内には産まれるよ。」と言われ、希望の光が見える。「○○って何ですか?」「赤ちゃんの頭が見えてるってことですよ」

 

陣痛の波が来たら、いきむ時に手元のバーを握りしめるように言われる。あと、よく足を踏ん張るだとか、背中を起こすだとかいう話も聞くので、それらを全部やってみた。が、それだと赤ちゃんを押し出すところに力が集中できていないらしい。なので、肛門辺りに全意識を集中させて、波が来たらバーを握りしめつつ、う○こを出すかの如く渾身の力でいきむ!

 

そういえば、分娩時に同時に排便してしまうことがあるという話は事前に知っていて、だから陣痛中にも無理してトイレに行っていたのだが、もはやこの時は一緒にう○こが出ようがどうでも良い心境だった。とにかく、地獄の底から沸き上がって来るような、この陣痛の波が辛すぎる。波が去った後はクタクタなのだが、普通に会話もできるし頭は至って冷静にものを考えられる。

 

陣痛の波が来ると、「あ゛あ゛あ゛ーーー!!」と唸り始める私、同時にバタバタとうちわを仰ぐ旦那、波がピークに達した所で渾身の力でいきむ!「ぐぅーーーっっ!!」「そうそう、上手だよ!」この間、3秒くらいだろうか?息を止めていきんで、息が続かず諦めると、「もう一度、せーの!」と言われるのだが、この掛け声と私の呼吸が全く合わないし、いきみも1回目と息継ぎしての2回目とじゃ明らかに威力が違うのが分かっているので、この2回目のいきみは全くやる気のない惰性のいきみになっているのが自分では分かる。冷静な自分が、2回目のやつは意味ないのでやめたいんですけど…と言いたいが、さすがにこの状況で言えない。

 

何度かこれを繰り返し、これ以上の力は出そうにないし、むしろ弱まって行くだけなんじゃ…と思い、ダメもとで「引っ張ってもらえませんか?」と聞いてみた。吸引だか鉗子だか、何かしらの道具を使ってでも、この地獄の陣痛を早く終わらせたい。「もうそこまで来てるから自分の力だけで産まれるよ。」と返される。

 

ところで旦那はというと、私の左側にサポーターとして張り付いていて、私の「お茶」「汗ふいて」「タオル」という言葉にてきぱきと反応して動いてくれていた。体をさすったり、声をかけたりということは一切なかったが、私がそれらを求めていないことを理解していたのだろう。何も言わなくてもずっとうちわであおいで風を送ってくれていたのが本当にありがたかった。

 

15:45 隣の分娩室から「オギャー‼オギャー‼」という声が。お隣さん、産まれた。よーし、私も!…というモチベーションには、残念ながら、ならなかった。むしろ、プレッシャーとなり、気が散って仕方がなかった。もう一度、「もう引っ張って欲しい」と頼んでみるも、今度は無視される。

 

自分の力で産めると言われているのに、もう頑張れない、と思ってしまっている自分。赤ちゃんも頑張ってる、私ももっと頑張らなきゃいけないのに、どうしよう。終わらない。一昨日の妊婦さんは、断末魔の雄叫びを9時間続けた。お隣の妊婦さんは分娩室に入って3時間以上頑張ってやっと産まれた。私はまだ分娩室に来て1時間も経ってない。頭もこんなに冷静だし、きっとまだぜんぜん頑張れてないんだ…。

 

と、そこへ院長が登場!「Sさん、おめでとうございます‼」「え??」助産師さんも、慌てて「院長、こちら、Sさんです」「はい、よく知っていますよ。Sさん、お産進んで良かったねー!」院長は、妊婦健診の時からずっと診てもらっていた先生で、私も旦那も信頼を寄せている。もしかして院長が赤ちゃん取り上げてくれるのかな?助産師さんは、院長がお隣の妊婦と間違えておめでとうと言ったのかと勘違いしたらしい。

 

院長が下の方に回り、ベテラン助産師さんと会話。「いい感じですねー」「吸引してくれって言うんですけど…」「疲れちゃったんでしょう。Sさん、少し切開しましょう。麻酔しますので少しチクッとしますね。」会陰切開!そういえばそれが先だった!妊娠中は、会陰切開が怖くて、切らずに済むように会陰マッサージを頑張っていたが、この時はどーぞどーぞ切って下さい!と思った。

 

実際、麻酔のチクッも、切開も、一瞬の何てことない痛みだった。切られた時は何か生暖かいものが流れ出た感覚はあったが、もう何が出てようがどうでも良い。それから、数回のいきみを繰り返す。陣痛の波にも強い、弱いがあるみたいで、いきみの強さもそれに比例するらしく、院長が「今のはちょっと弱いね」と声に出して言ってくれるので、今のはダメだった、次頑張ろうと思えるようになっていた。そして何度目かのいきみで、突然「もういきまなくていいよ!お母さん、こっち見て!赤ちゃん産まれるところ見て!」と言われ、足元を見ると、大きな声で「オギャー‼オギャー‼」と泣きながら、赤ちゃんが高々と持ち上げられた。院長が時計を見て、「15時57分」と言った。

産まれる瞬間は、股に頭が挟まった感覚も、大きなものが通過した感覚もなく、突然いきまなくて良いと言われて「え?」と思っているうちに出てきた、という感じだった。

 

本当にこんなに大きな、一人の人間が、お腹の中に入っていて、出てきたんだー。という驚きと、無事に産めたという安堵感、そして何より、終わったーー!という達成感。嬉しくて、その後の胎盤を出す時や切開したところを縫われている痛みは全然耐えられた。

 

それから約1時間半、分娩室で休息を取りながら、夫婦で赤ちゃんの写真を撮ったり、おしゃべりをしながら過ごした時間はとても穏やかで、幸せな時間だった。今なら、何が起きようとも全てのことを笑って許せる気がする。

 

…その後、じゃあそろそろ移動しましょう、となって動き始めた時に、お尻の激痛と貧血に襲われ、部屋まで車イスで移動する。それから1週間以上、座るのも困難なくらいのお尻の痛みに襲われることになる。心は満たされていたが、体へのダメージはそれなりにあったらしい。あとで旦那に聞いたところによると、分娩中の私は内心、やる気を失っていたのだが、傍目には顔を真っ赤にして血管切れるんじゃないかと思うくらい踏ん張って、めちゃめちゃ頑張っているように映ってたらしい。助産師さんからは、静かなお産だったと言われる。

 

 

と、こんな感じで、私のお産は終わりました。とても長く感じた3日間でしたが、家族や先生、助産師さんたちに支えられて無事に出産することができ、とても感謝しています。

 

3日目のお産がスムーズに進んだのは、2日間の薬のお陰かもしれないし、十分に睡眠がとれたからかもしれないし、バランスボールの上でバウンドしたからかもしれないし、食べられる時にご飯をしっかり食べたからかもしれないし、呼吸法がうまくいったのかもしれないし、ナースコールでアピールしまくったのが結果的に良かったのかもしれない。何がどう繋がって、こういう結果になったのかは分かりませんが、お産は本当に人それぞれ違って、それぞれにドラマがあるんだなぁと思いました。

 

 

不妊治療から始まったこのブログですが、この出産レポートを持って終わりにさせて頂こうと思います。つたない文章であっただろうと思いますが、自分なりに意義を持って綴ってきました。このブログが、誰かの目に止まって少しでも役に立つことがあれば、幸いです。

 

不妊治療の時から妊娠中、出産に至るまで、沢山の応援ありがとうございました!

 

2017年5月31日      ぴろりん